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横浜発 7:54
第5章 線
「俺も休み取るよ。ちょっと待ってて」
矢野さんは会社に電話をして有給を取る連絡を入れた。
「8時半か・・。場所はどこでもいい?」
「話をするのって・・・この近くのコーヒーショップとかじゃないんですか?」
「うん。行きたいところがあるから」
頭の中で行先のルートを確認したのか
私に笑いかけて手を差し出す。
「はい」
先週と変わらない、その口調に私の手は吸いこまれた。
何も話さない2人の代わりに
繋がれた手は雄弁で。
ぎゅっと繋がった手は、秋なのに汗をかく。
反対側の上りホームへ行って
横浜を経由して京浜急行に乗った。
段々と人が少なくなって
ああ、サボってるんだな。と感じる。
矢野さんと2人で、サボってる。
空いてきた車内で3人分の座席スペースに2人で座って
微妙に離れた身体とは裏腹に
手はしっかりと繋がれたままだ。
金沢八景で降りて。ぶらりと目の前のシーサイドラインの駅に向かう。
そこから2駅乗って、少し歩くと目の前に海が広がった。
「それでも、9時半前か。誰もいないな」
初めて。
矢野さんを知り合いだと勘違いして声をかけた時のように
矢野さんはごっつい腕時計を見ていた。
平日の朝の海は空いていて。
ほとんど人の影は見えない。
海が見える木陰のベンチに2人で並んで座った。
2人でしばらく、静かな海を見つめて
どれぐらい時間がたったのか。
矢野さんが口を開いた。
「で?さくらはどうしたいの?」
矢野さんは会社に電話をして有給を取る連絡を入れた。
「8時半か・・。場所はどこでもいい?」
「話をするのって・・・この近くのコーヒーショップとかじゃないんですか?」
「うん。行きたいところがあるから」
頭の中で行先のルートを確認したのか
私に笑いかけて手を差し出す。
「はい」
先週と変わらない、その口調に私の手は吸いこまれた。
何も話さない2人の代わりに
繋がれた手は雄弁で。
ぎゅっと繋がった手は、秋なのに汗をかく。
反対側の上りホームへ行って
横浜を経由して京浜急行に乗った。
段々と人が少なくなって
ああ、サボってるんだな。と感じる。
矢野さんと2人で、サボってる。
空いてきた車内で3人分の座席スペースに2人で座って
微妙に離れた身体とは裏腹に
手はしっかりと繋がれたままだ。
金沢八景で降りて。ぶらりと目の前のシーサイドラインの駅に向かう。
そこから2駅乗って、少し歩くと目の前に海が広がった。
「それでも、9時半前か。誰もいないな」
初めて。
矢野さんを知り合いだと勘違いして声をかけた時のように
矢野さんはごっつい腕時計を見ていた。
平日の朝の海は空いていて。
ほとんど人の影は見えない。
海が見える木陰のベンチに2人で並んで座った。
2人でしばらく、静かな海を見つめて
どれぐらい時間がたったのか。
矢野さんが口を開いた。
「で?さくらはどうしたいの?」