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横浜発 7:54
第6章 下
「あの、さっき一緒にいた男は?」
「え?」
三木さん?
「ここ数日、一緒に通勤してるよな?」
「え?」
「あのさ・・・二人でスマホをのぞいたり、マジで凹んでるんだけど」
「ええ?」

矢野さんは私を抱きしめながら、私の頭に自分のほほを乗せてきた。

「数日前に、たまたまさくらをあの時間に見つけて
声をかけようかと思ったけど、男と笑ってた。
やけに親しそうに2人でいるから声をかけられなくて・・・」

見られてたんだ・・・

「7:54に乗らなくなった理由は、さっき話したことだけ?」
「え?」
「あの男は、関係ない?」

抱きしめられた隙間から、潮のにおいがした。
約束通り、海に、連れてきてくれたんだなぁ。

お姉ちゃんが言うには。
矢野さんは女の子にも冷たくて
仕事でも隙がないって感じらしいけど。
私には甘くて、やさしくて。
ちょっと自信がないところがかわいい。

「三木さんは・・・」

私も矢野さんのワイシャツをぎゅっと握りしめた。

ああ、今度は私服で来たいな。
休日に、朝早く約束をして
お弁当と水筒をもって。

シートを持ってこよう。
寒くなる前に来たいな。
もう、そんなに暑くないからシートの上で2人でお昼寝したら気持ちがいいだろうな。

「さくら?」

次のデートの妄想をしていたら
矢野さんが話の続きを促した。

「三木さんは、結婚してるのよ」
「え」
「お子さんの写真を一緒に見てたの。三木さんの自慢なの」
「そ・・・っか」

「お互いに、きちんと言葉にしないとダメなことがまだまだ多いな」
「うん」
「ちゃんと言葉にしよう。ちゃんと相手に聞こう」
「うん」



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