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潮騒
第7章 衝撃 ー時化ー
幼子の弔いは、ごく内輪の身内のみでひっそりと行った。
小さな棺桶に踞らせ、蓋をして土中に埋める。墓石には浜で拾った丸い石を重ねて置いた。
小さな小さな墓の前で、菊乃は足が痺れるまでしゃがんだまま、何時迄も手を合わせ、己の至らなさを詫びた。
初七日が過ぎ、四十九日が過ぎる頃には季節も変わり、家族は以前と変わらぬ生活に戻っていく。
ただ、そこに剛志が居ないだけ。
思い返すとそこには悲しみしかない。
だから、誰も口には出さぬ。
まるで、初めからそこには居なかったかのように。
家族の生活の中からぽっかりと切り取られ、剛志は消えた。
今はただ、菊乃の胸にひっそりと生きるのみとなった…
小さな棺桶に踞らせ、蓋をして土中に埋める。墓石には浜で拾った丸い石を重ねて置いた。
小さな小さな墓の前で、菊乃は足が痺れるまでしゃがんだまま、何時迄も手を合わせ、己の至らなさを詫びた。
初七日が過ぎ、四十九日が過ぎる頃には季節も変わり、家族は以前と変わらぬ生活に戻っていく。
ただ、そこに剛志が居ないだけ。
思い返すとそこには悲しみしかない。
だから、誰も口には出さぬ。
まるで、初めからそこには居なかったかのように。
家族の生活の中からぽっかりと切り取られ、剛志は消えた。
今はただ、菊乃の胸にひっそりと生きるのみとなった…