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向日葵
第11章 想い愛
 出版社を出ると、ムァっとした空気に包まれた。
クーラーが効き過ぎる部屋も嫌だが、一歩外に出たらたちまち汗がでるような暑さも苦手だ。
去年はタウン誌の営業でスーツを着て汗だくになりながら、外回りをしていた。
『暑い』なんて嘆いても涼しくなるわけではない。
無駄な事はなるべく考えず、なるべく日陰を歩いていた頃が懐かしい。

 白石には仕事を辞める事を引き留められたが、私の事情や夢を素直に打ち明けた。

『君の夢を応援出来る男でありたい。
俺は君のファンにはなれると思う。
新たな川上すみれを魅せて欲しい』
そう言って、背中を押してくれた。

 私はつくづく頑固で勿体無い女である。
性が邪魔をして、真っ直ぐな愛に飛び込めず、我を通して生きていく事を宿命として背負わされた様だ。


 去年の夏は葉月と一緒に過ごしていた。
恋をしている時が一番輝いているのではないだろうか?
頑張りたくない事でも頑張ろうと思ってしまう。
心の支えというのは、自分に鞭を打てる励みでもある。
葉月と別れた後、約束を果たす為にまた小説を書いた。
一人になって空いた時間は長く感じた。
何もしないと寂しさに負けてしまいそうだった。
だから書いた。

 書き続ける事で葉月と繋がりたかったから。
表向きに送れないラブレターを小説にした。

 葉月と私のノンフィクションの愛は小説の中で生きた。
文字となった私の言葉は、饒舌に愛を語り、狂おしい程の恋地獄に貴女を突き落として心を丸裸にしていった。

 それくらい貴女を愛していた。

 愛の言葉を文字にする事で、二人の本当の姿を明るみにし、そういう性でしか生きれない人間も居るという事を知って欲しかった。
隠して生きるほど、後ろめたい事をしているわけじゃない。

 いつか、そういう性の元で生まれた人も、世の中に認識される様になり、人の輪から外れる事なく、温かく見守って貰える日が来ると信じたい。

 そんな願いを込めた。





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