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貸し出し遊戯
第2章 いきさつ サイド悠介
一方、佐伯 悠介(サエキ ユウスケ)は社内教育や親睦、リフレッシュのためのイベントに特化した、イベント会社に勤めていた。
年は38歳で、外的な肩書きは名刺に『captain』とされているが、社内では役職といったものは存在しない社風であった。
自分の呼ばれたい名前を申告し、その愛称で呼び合うことをボス(社長)が決めていた。
そこに自分のパーソナリティーや夢、憧れを描いたニックネームを皆それぞれに名乗り、呼び合うことでモチベーションのアップに繋げていた。
仕事を通して人生の夢、すなわち生き方を叶えていくと言う、個人の人生や個性を尊重する、ボスのやり方であった。
悠介は、夢探しに出る海賊船の船長をイメージし、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の「ジャック・スパロウ」から取って「ジャック」とつけようとしたが、
ボスから「まだ船長のジャックのイメージにはなれていない」とダメ出しされ、
いずれ「ジャック」になることを目指し、『いつかは、ジャック』になった。
みんなからは『ジャック』と呼ばれており、本名を言える人物は多分皆無であろうと思われた。
妻の美咲(ミサキ)は、悠介と同級生の38歳で、同じ会社に勤める友達夫婦な感じであった。
ジブリ好きの彼女は5月(May)生まれなこともあり芽吹きの萌えるイメージと重ね、
「となりのメイメイ(萌生萌生)」と名乗っており、
悠介も本名ではなく『メイ』、『メイりん』など、メイをもじった名前で呼んでいた。
夫婦仲はよく、仲良くやっていたのだが、友達感覚が強くなると男女といった感じではなくなり、
夫婦生活のマンネリ打開の相談をボスに何気なくしたところ、アドバイスとしてこういう場を教えられた。
この交換会への参加は、50になる今でも独身を通しているボスに勧められてのことだった。
ボスは相互鑑賞会という、複数人で見せ合っての鑑賞や勉強しながら愉しむというものに入っていて、
結婚を避けていた訳ではなかったが、独身なりの気儘なプライベートを送っていた。
うちに帰ってボスのアドバイスを冗談交じりに妻に話してみたら、「行ってみたい」と思わぬ素直な反応の良さで、
悠介は「さすが女は革新的だ」とその好奇心に舌を巻きつつも、
今までにない高揚感にワクワクする気持ちを抑えられずにいた。