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キスの後で…
第5章 と
その日の夜遅くに電話の着信音が鳴った。
待ち受けを見ると登録されていない番号で・・・
先輩だっ!
だれだかすぐに分かったその直感に可笑しくなる。

番号なんか知らない癖に・・・

初めての電話は嬉しさより怖さが勝った。
どんな話をされるのかわからない恐怖で出ることはできない。

もし、もし今外に出て来いと言われたら。
きっと私は、辛い身体を隠して支度をして
わざわざフラれに行くんだろう。

それともあっさり電話で終わりを告げられるのか。

「俺に好きな子が出来るまで」

そう決めた先輩との付き合いは、先輩の一方的な感情で終了する。

先輩からの初めての電話に、その着信音が鳴りやむまで聞いていた。

涙が一粒すっと流れて枕に吸い込まれる。
今は風邪で気持ちが弱っているだけ。

積極的に治そうとしない身体は2日たっても熱が引かなくて
いよいよ家に食べるものもなくなって
仕方なく、絵里に電話をした。

とっくに切れている携帯の充電は
電気に差し込んだとたんに何件もの不在通知を表示して
そのすべてが未登録の番号なことに
喜んでいいのか、悲しいんでいいのかわからなかった。

とりあえず、絵里に電話しないと。
そう思って番号をタップすると、慌てた調子で絵里が電話口に出た。

「桃花!あんたここ数日どうしたの?」
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