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霞草
第9章 無知
三文字で最後が「子」
ずっと霞と呼んでいた彼女の名前は、それしかわからない。

僕も宿帳には全く関係ない名前と住所を記し

修二の「しゅう」だけを語った。

おあいこ?
名前も知らず別れも告げずに離れてしまった。

僕と霞は、この先、一緒にいることはできない。

僕の中では霞は霞だ。

僕には、あそこで過ごした時間がある。

今までにない成長をした。実際に体験した僕がいる。

それだけを思い、来た時と同じく眠るようにして家に戻った。


大きな花束を持ち、眠る僕。
他の乗客からみたらおかしいだろう。

さほど、疲れていた訳ではないが、
最後に気付いてしまった霞の名前の違和感のこと、
これから、家に帰り、両親にどう話すか。

考えているうちに、いつの間にか眠ってしまった。

平日で良かった。
空いていて座れたし、あまり多くの視線を感じなくて済む。

最後の乗り換えは夕方を過ぎていたので、公衆電話から家に電話する。

母は、また、泣き叫び、どこにいるの?帰ってきて…を繰り返す。

「帰ってきてるよ。夜には家に着く。夕飯を用意していただけますか。」

と話した。

母は信じられないのか、

「本当なの?」

を繰り返す。

「ちゃんと帰ってますから。」

と受話器を置いた。
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