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霞草
第9章 無知
僕は怒りに震えて
「おじさんはそんな人ではありません。
この花ももらったんです。
家族を大切にしてて、僕も家族のようにしてもらったんです。」
と叫んだ。
父は
「つまらない貧乏人に感化されたな。
要は、宿泊代が足りないのをいいことに、タダ働きさせられたのに、騙されて…
貧乏臭い花を飾るな。」
と、花瓶ごと払いのけた。
花瓶が倒れ、花が散らばった。
僕は、霞草をかき集めて、部屋に戻った。
父は、僕の背後に
「遊び呆けたんだ。来週から予備校に行け。二度と家出中の話はするな。」
と、怒鳴った。
僕は、家族が寝静まるのを待ち、霞と作った珈琲カップに霞草をいけて、部屋に飾った。
そして部屋には常に鍵をかけた。
僕は、父に霞の家族から学んだことを理解してもらおうとは思わなかった。
おじさんが、
「気付いただけで儲けモンだ」
と言ったことを思い出した。
気付けば儲けモン、
気付かない人間もいるのだ。
ただ、家出した時のように、父に反発することもなかった。
取り敢えず、他に進路のない僕は、予備校にいき、当面の課題を真剣にこなすことにした。
父は、人が金で動くと考える人間、父も人として無知なのだ。
僕は、僕の人生を精一杯生き抜く。
見えない将来に向かって、今出来ることを頑張る。