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霞草
第3章 新天地
目覚めはスッキリとしたものだった。

家族旅行をしたのは何年前だろうか。
ましてや一人旅なんてしたことがない僕が、
知らない土地に来て、
こんなに清々しい目覚めを迎えるとは思いもしなかった。

他の客になるべく会わないようにしたい。
朝食も早めに摂り、身支度をして出た。

駅へ向かい、昨日目的地に定めた山に向かうバスを探した。

1時間に1本という少なさだが、運良く数分後にバスは出るようだ。
車内には、ハイキングの支度をした年配の方が多かった。

若いカップルがいないので落ち着いた車内だった。

毎晩宿探しに徒労したくない、今日、理想に近い宿を見つけたい。

だが、大きな荷物をもった客がいないので、少々焦っていた。

大して高い山ではなさそうで、登山というよりはハイキングになるのだろう。

皆、自分達に合ったコースのあるバス停で降りていく。

少し、山の中に入り停留所の間隔がだいぶ長くなる。

僕は不安になり、次の停留所で運転手さんに尋ねる。

「ここから先で宿泊できる所ありますか。」

愛想のいい人で、

「次の停留所に一軒、多分今もやっているだろう。
そこから先は、登山コースで泊まれるところはないよ。
もし、宿がやってなければ、折り返したこのバスに乗るといい。」

親切に教えてくれた。
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