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霞草
第1章 はじまり
初めて味わう挫折、
さすがに自分でも浪人生になるなど思ってもおらず、
発表の日、夕食もとらずに部屋に閉じこもった。
夕食の間リビングから、
「まさか、全部ダメだなんて、」
泣きながら言う母と、
「あいつ、プレッシャーに弱いからな‥、」
と話す兄の声が耳に入ってきた。
遅くに帰ってきた父に呼ばれるままにリビングに行く。
母がおろおろしながら、僕のそばにいる。
「みっともない、浪人するからには、もちろん兄貴と同じ大学に入れるよな。
明日から、ここに行けるようにしてある。」
父はそれだけ言い捨て、予備校のパンフレットをテーブルに出し、席を立った。
僕はパンフレットを掴み部屋に戻った。
ベッドに身を投げ出した
医者になる、生まれた時から決められていること
疑いも反発もなくそれを目指してきた。
そのために犠牲にしてきたものもあったはずだ。