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霞草
第8章 別離
お互いの気持ちを知ってからも、僕達は変わらない生活を送った。
僕は、平日に街の花屋に霞草を配達するのをかってでた。
花屋では、『霞ちゃんところの兄(あん)ちゃん』などと呼ばれた。
平日に配達しておけば、週末、霞の時間があく。
その分、週末ゆっくり近所を散歩して、二人でいる時間が取れる。
配達も霞の学校帰りに合わせて、バス停で待つ。
携帯がない時代、ひたすらバス停で待つ。
さすがに女子高の正門で待つ勇気はなかった。
わかっている日は、霞も急いでバス停に来ているようだが、
突然の配達もあり、僕は、霞が驚く顔が見たくてニヤニヤして待つ。
こうして作りだした時間を二人で過ごす。
先の話がタブーななか、他愛もない話が多いのだが、霞の人柄を知るほどに、愛しさが募った。
その日も突然の配達後、霞と一緒に帰った時だった。
おばさんが霞に
「なんだか荷物が届いてるわよ。」
と声をかける。
霞は、「あっ」と微笑んで台所にある箱を持ち、二階の勉強に使っている部屋に僕を引っ張る。
封を開けるまで、すっかり忘れていたもの、陶芸で焼き上がった珈琲カップ。
それぞれの包みを開ける、どんな仕上がりなのか、わくわくする。