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禁断背徳の鎖・絡み交錯する運命の赤糸
第5章 その時・紀永-
「・・本日の書類は、これで終わりになります」
「そうか………」
広い屋敷内の執務室…
無機質の机の上で、系列会社からの最後の1枚の書類に承認の判を押す。
「・・ふぅ・・」
ふと、重厚な椅子から立ち上がり、大きな窓ガラスから、敷地内の庭を眺める。
(あれからもう4ヶ月か………)
美紀が私を拒絶し、屋敷から飛び出してから4ヶ月…
あの後、何度か倉原宅に遠藤を使いにやったが、美紀は会う事すらせず、全て空振り。
「・・・・・」
あんなつもりでは無かった……
あんな風に傷付けるつもりでは……
だが、親子だと気付かなかった私の不注意…
美紀と名乗った時に、不思議な感覚はあった…
だが、それよりも美紀のあの姿に、あの瞳に惹かれ、年甲斐も無く恋に落ちている自分を自覚する事に…
立場より、年の差より、美紀を私のモノにしたいという欲求、はっきり言えば、知らず一目惚れをしていた。
「・・・・・」
窓から見える景色は何時も同じ、広すぎる庭と、その向こうに微かに見える建物ばかり。
あまり表には出ない私に取って、屋敷から見る景色はつまらなく、動かない絵を見ているよう…
敢えて、表舞台には顔を出さないようにしているが、本当にこれで良かったのだろうか?
一族の中でのし上がり、会長職を手に入れてからというもの、五月蝿く言い寄る女は数知れず……
それが鬱陶しくなり、ドンドンと表舞台に出る事は少なくなっていった。
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