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薔薇色に変えて
第3章 再会に添えられた喜び
店を出て、商店街を少しだけ一緒に歩いた。
「成沢さんは京急線ですよね、私はJRなんでここでお別れです」
話したりなかった、という気持ちがほんのわずか、足を止めた。
「そうですか、では・・また。あの・・」
成沢さんは少し頬をたるませて、言った。
「僕も常連の仲間に入れていただけるでしょうか」
私はすかさず答える。
「もちろんですよ!是非、薔薇色の仲間になってください。
マスターも喜びますよ、儲けが増えるって」
最後の一言は要らぬ言葉だとわかっている。
だがちょっとばかし舞い上がった私の心を誤魔化すには、
こんな言葉くらいしか思いつかなかったのだから仕方がない。
自分に対する印象にマイナスなイメージができたかも、と一抹の不安がよぎったが、
成沢さんは笑っていた。口を開けて笑っていた。
「そうですね、是非売上協力させていただきますよ。では・・また。おやすみなさい」
「おやすみなさい・・」
背中合わせに歩き出す。
まだまだ人のざわつきが活気をもたらす商店街を、私は顏をあげて前へ進む。
こんなふうに夜の商店街を笑顔で歩くのは、久しぶりのことだ。