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同棲中の彼とのセックスレスを解消したい!
第5章 糸口
「そうだ、れみ。帰ったら、れみが前貸してくれたバンドのCDをもう一度貸してくれないかな? この間、スマートフォンが壊れちゃったときに入れていた曲も全部消えちゃって」

「うん、もちろんいいよ。はじめもあのバンドのことを好きになってくれて、ほんとうに嬉しいわ」

「ありがとう。特に『螺旋』っていう歌が好きでさぁ」

「わたしもあの歌、好き」

「俺たちって、好きになる歌の傾向もそっくりだよね。そういえば、ライブもいっしょに行きたいねって言っていたのに結局まだ行けてないよね。今度もしツアーがあったらさぁ、行ってみない?」

 わたしは微笑んで、いいねと言った。
 彼が満面の笑みで、やったぁと言う。好きなものがいっしょだと、ふたりでいろいろなところへ行けるからいいよな、とも。
 わたしはその言葉を噛み締めるように、ゆっくりとうなずいた。
 彼はセックスよりも他にふたりで楽しめることを考えてくれている──。

「結婚生活が長い夫婦みたいだよな」

 彼の言葉にどきりとする。
 それを気付かれないように落ち着いた声で返事をして、わたしはコーヒーをひとくち飲んだ。あたたかさがくちの中いっぱいに広がり、耳のあたりにまで届いていった。

「紅葉も見に行きたいな。俺さ、昔はそんなに紅葉とか桜とか興味なかったんだけど、れみと付き合ってから見に行く機会が増えて、だんだんといいなって思えるようになったんだ。今年も来年も、これから先もふたりでのんびり歩きながら紅葉や花を見に行きたい。自然のものだけじゃなく、ライブとか映画とかテーマパークなんかも」
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