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美しい貴方の血がほしい
第1章 吸血姫の恋

「愛して……」
私は気がおかしくなるほど昂ぶり、彼の首に腕をまわした。
甘くかぐわしい血の薫りが首筋から漂ってくるのに耐える。
彼は私の乳房にやわらかく手を添え、先端の朱い突起を口に含み舌先で愛撫している
私は愛しさをつのらせて彼の頭を掻き抱く。
この首筋に牙を立てるのは、まだ早い。
彼を見つけたのは気まぐれに開いた動画サイトだった。
新曲のPVの中で彼は作り物の血にまみれて歌っていた。
男にしてはずいぶん綺麗な顔をしていたので実物を見たくなって、ライヴに足を運んだ。そこで生身の彼が放つ妖艶なオーラに魅了されてしまったのだ。
私は足繁く通い、最前列で彼に見惚れていた時ふと漂ってくる甘い芳香に気が付いた。
「ああ見えてベジタリアンらしいよ」
ファンの噂で聞いたことは本当だったらしい。
彼の血が欲しい――一度そう感じてしまったら、もう耐えられなかった。
すでに数百年を生きてきた私には子孫を遺す能力はないが、欲情することはある。そして欲情の対象は同時に吸血欲の対象でもあった。
血を吸ってしまえば口封じをしなければならない。彼を始末してしまったら二度とあの妖艶な姿は見れなくなる。私は葛藤した。
彼の血を吸いながらも生かし続ける唯一の方法があるとしたら、わずかな可能性に賭けるしかないが、私の仲間にしてしまう以外にない。私と血と体液を交換して、運が良ければ彼は美しい姿のまま永遠を生きられるようになる。
失敗して死ぬ確率の方が高いのに、その考えは私を虜にしてしまった。
そして彼との一夜を求めるのは、その気になれば簡単なことだった。

