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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第5章 しのちゃんの受難(三)
「ドラッグストアでいろいろ買ってきました」
ガサガサと袋を漁って、テーブルの上に、ヨーグルト、ゼリー、栄養ドリンク、パン、水などを並べてくれるので、冷蔵庫に入れなければならないものだけ回収する。
「あ、お構いなく」
ソファに座ってキョロキョロあたりを見回して、里見くんはペットボトルのファンタを飲む。
「……帰らないのですか?」
「なんでですか? 看病しに来たので帰りませんよ」
いや、居座るのが当然という顔をされても困る。
けれど、怒る気力もない。里見くんを叩き出す気力はもっとない。
「何か欲しいものがあったら買ってきますから、遠慮なく言ってくださいね。あ、電気お借りします」
「……好きにしてください」
里見くんは鞄からパソコンを取り出して、テーブルの上に置いた。指導案でも作るのだろう。やることがあるなら、いいか。
水を飲んで、トイレに行ってから、リビングの隣の寝室のベッドにダイブする。
あぁ、気持ちいい。
さっきまでソファで寝ていたので、体がバキバキだ。ふわふわのベッドの上だとすぐに睡魔が襲ってくる。
このとき、私は最大の失言をしたことに気づいていなかった。
油断していたのだ。
二日続けて里見くんから抱きしめられなかったことを内心とても喜んでいたけれど――彼の狙いは別にあったのだった。