この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)
教育実習生は、授業で使う教材を研究し、生徒が課題を乗り越えられるよう、学習指導案を作成する。それに基づいて模擬授業や研究授業を行う。
佐久間先生は二年六クラスをすべて教えているのだけれど、全クラス分の指導案を作るのは難しい。それこそ里見くんが多忙で死んでしまう。里見くんは四、五組の模擬授業、四組の研究授業を行うことで決定したようだ。
ちなみに、一・二・三組は進学クラス、四・五組は難関私立進学クラス、六組は国公立進学クラスとなっており、四五六組は、特別進学――特進クラスと呼ばれる。授業見学は全クラス行うが、授業を行うのを二クラスに限定したのはいいかもしれない。四・五組は学力も同レベルだから。
……にしても。
「あんなにクマ先生がわかりやすく説明しているのに、なんであんなに理解できないんでしょうね!」
「四組は文系だから、数学が得意じゃない子が多いんですよ」
「それにしても、英語の予習ばかりしている生徒が多すぎます!」
「英語は受験に必須ですからね」
里見くんは、私の城にパソコンを持ち込んで、指導案を作成するための準備を始めた。
実習生は職員室の隣の会議室を使うようになっているのだが、里見くんは国語準備室を指導案作成の場所に決めたようだ。迷惑ではないが、気は休まらない。
とりあえず、今日はフォーマットの確認と生徒観について、だ。
生徒観……里見くんは憤っている。彼の授業態度を見たことはないけれど、きっと真面目だったのだろう。宿題を忘れたりはしなさそうだ。