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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)

 私立誠南学園高等部、二年四組、副担任。私、篠宮小夜は国語教師だ。今年で五年目、二十七歳になる。

 四組担任の佐久間先生は今年度で定年退職の数学教師。厳しいことで有名だが、教え方は抜群にうまい。私も受験のときに何度もお世話になった。
 だから、佐久間先生に宿題をたくさん出されていたぶられている生徒たちから泣きつかれても、私は笑顔で宥めるだけだ。それが一年後の生徒たちの力になるのだから。

 私たちのクラスに実習生が来るのは、だいぶ前から聞いていたけれど、誰が来るのかはまだ知らない。たいてい、四年前の卒業生だ。ちょうど私が新任した年の三年生たちだろう。その年は、私は二年生の副担だったので直接の関わりはないけれど、顔を見ればわかるかもしれない。

 そういえば、私に男を見る目がないと言っていた男の子も、四年前の卒業生だ。
 懐かしいなぁ。彼ももう二十二歳になるのか。ちゃんと就職の内定が出ているといいんだけど。

 付き合い始めの頃にもらったピアスは、昨日礼二の部屋に置いてきた。捨ててもよかったのだけれど、何となく、家まで持ち帰りたくなかった。
 今日は久しぶりに自分で買ったピアスをつけた。まだ誰にも気づかれていない。

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