この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断背徳の鎖外伝・遅咲き桜-
第5章 誘惑-ピアノ演奏
「・・随分手慣れているわね伊織?」
「さあ……
どう取るかはリュカにお任せしますよ」
慣れてなどいない、ただこの数日で私の心の中が少し変わっただけ…
「旅行者でしょう?」
「・・・
明日には函館を発ちます」
「そう‥残念……」
「・・・・・」
何を思って彼女は言うのか、私がそれを問う訳にもいかず、私はカウンターに寄り掛かり煙草を1本取り出し吹かす・・
「・・・・・」
流れる煙‥それは今の私そのもの…
報われぬ‥叶わぬ恋なら、その捌け口に違う女性との一夜限りの関係。
胡桃に教授され、翡翠で自信が付いた私の性的欲求…
普通の男から見れば少し遅いのかも知れないが、私は漸く女性に対する"私らしさ"を見つけたようだ。
何時もの私に戻れば、こんな事をする機会があるのかすら分からない…
ただ、今までのようにひたすら耐えるのでは無く、少しは外に出て見ても良いのではないか??
今回みたいな長い休暇は無いが、私にだって休みくらいはある。
会長の予定で前後する事は間々あるが、一応普通の会社員サイクルの休みは貰ってはいる‥休みでも屋敷内から殆ど出ない為に、仕事と休みの境目が微妙になっているだけ。
「・・・
また‥函館に来るの?」
「さあ‥どうでしょうか……」
私は桜が見たいと思い函館を選んだ…
何となく私と同じ、少しだけ遅く咲いてしまった桜‥やはり何か惹かれる物があったのだろう。
「もしかしたら、また来るかも知れませんね‥遅咲きの桜を見に……」
そう彼女に言い、煙草を消して店を後にする・・・
一夜限り以外は必要無い、ほんの少しのぬくもりがあれば‥それで良い、この心が美紀様に向いている内は、それしか思わないし思えない。
その私自身の心を、嫌な程理解しているから・・・
・