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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!
Hina side
都内某所――。
いまだ酷暑を引き摺る九月。
これだけ茹であがり続ければ、食欲も減退気味になってしまうけれど、冷えたスイーツの魅力はオールシーズン有効らしい。
「うま! このまるごと桃パフェうま!」
思わず落ちそうになるほっぺたを抑えながら感嘆の声を上げると、クールビューティ衣里も、フリフリのロリ杏奈も口々に声を上げる。
「うま! このまるごとピオーネパフェもやば!」
「うま! 杏奈のまるごとごろりメロンもうま!」
雑誌で取り沙汰されている、お洒落な外観で人気のオープンカフェ。
仕事帰りにダッシュして並び、ようやく入店出来た……あたし、衣里、杏奈の三人。
カフェ名物『まるごとフルーツ』シリーズを注文し、三人で写メをとってSNSに上げようなどと話していたのに、いざその豪華絢爛なるパフェを目にすると、スプーンを持つ手が止まらなかった。
魅惑的な宝石を載せたこのパフェの味を、三人ともに「うま!」としか表現が出来ないのが、悔しい限りだ。
「なんなの、この蕩けるような美味しさ! フルーツってこんなに美味しかったっけ?」
「値段は張るけどね。値が張るからこそのありがたみなのかもよ?」
あたしの感嘆に応えたのは、シークレットムーン唯一のお嬢様である衣里だ。最近は昇進して手取りが増えたようだが、相変わらず経済面でもクールビューティ。けれど、着ている服はシンプルながらも決して安物ではない。