この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!

「いやー、今日も幸せだね!」
生クリームがついたお口を紙ナフキンでふきふき、思わずにっこりして言うと、杏奈がすかさず突っ込んでくる。
「香月ちゃんと結婚が近い、この超リア充がなにを言う」
「そういう杏奈の三角関係はどうなのよ。向島専務とよりを戻すの? それとも木島くん?」
すると聞いていた衣里が、心底嫌そうな顔をしてぼやく。
「うわー、陽菜、マジで木島を選択肢に入れているんだ?」
「当然でしょう? 木島くんお洒落に芽生えて、もう毎日が充実してますと言わんばかりに、おめめキラキラだし! 一応あたし、直属の上司なんだし、気づかないわけないよ!」
すると衣里がため息をつくと、遠い目をして呟く。
「……お洒落……ねぇ。この前の休日に、木島にばったり街で会ってさ。そしたら、劇画タッチのバーコード頭でおっさん顔のブタが、鼻ほじくりながらとんかつ食べているTシャツを着ていてね」
木島くん、チョイスが凄すぎるわ……。
「これは心を無にして、気づかないふりをして通り過ぎようとしたら、木島に見付かってさ。わざわざ地雷踏んでくるのよ、香月からアドバイスを貰って選んだTシャツをどう思うか。いかにも褒めてといわんばかりのあのキラキラ具合に、私……負けてしまって……。陽菜の彼氏、センス悪くない?」
「え、朱羽のせい? 朱羽が前にアドバイスしたら、ゾンビ柄のシャツにしたらしいから、今度は言葉を選んで『可愛い動物柄』を提案したって言ってたけれど」
「……まあ、動物っちゃ動物だけどさ。そんな木島をどう思う、杏奈?」
話を振った先はスマホを弄っていて話を聞いていなかったらしい。
「え? ごめん、千絵ちゃんからメール来てて……」
懐かしい女性を思い出す。
それは向島専務の妹であり、そして元シークレットムーンの社員であり。
シークレットムーンを窮地に陥れて、そして助けてもくれた。
千絵ちゃんは、杏奈の仲介によって完全に専務の手から離れられたようで、たまにこうして杏奈に近況メールが来ているようだ。

