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Oshizuki Building Side Story
第4章 Brother complex Moon ①
「……陽菜。今あいつのことを考えてただろう。浮気者」
朱羽があたしの手を取り、指輪をぎゅうぎゅうに押した。
「痛い、痛いって! そうじゃなくて。朱羽の感情を刺激するひとがいることは、あたしも嬉しいんだ。朱羽は、渉さんだけだった世界から、大きく成長しているんだなあと思ったら。自分で、世界を広げているね」
そう言うと、朱羽はふわりとして笑った。
「あなたに相応しい大きな男になるために、俺は努力を惜しまないよ」
「朱羽……」
「だけど、あいつには会わないで」
朱羽は口を尖らせて、悔しそうに顔を背ける。
「俺より頭がよくて、超絶イケメンだから」
あたしと沙紀さんと顔を見合わせて、笑いながら朱羽に抱きつき朱羽の頭をくしゃくしゃにした。
「そこなの、朱羽が会わせたくない理由」
「悪いかよ」
朱羽は拗ねてしまった。
「あははははは、やだなあ。あたし朱羽だけだって」
愛おしくてたまらないあたしの婚約者。
いつだって世界で一番はあなただけ。
だから朱羽の周りに愛が溢れていて欲しいとあたし、思うんだ。
少しでも多く、家族の愛を朱羽にあげたいと思う。
ミーハー気分ではなく、朱羽が少しでも幸せになれるように、あたしが朱羽に出来ることは――。
あたしが、柚ちゃんと既に会っていたことがわかるのは、そして須王さんと知り合いになるのはもう少し先の話。
この頃のあたしは、あんな事件が起きるとは、予想もつかなかったのだ。
Brother complex Moon ① 【完】