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君を好きにならない
第10章 帰る場所
「なんか…
今日は
酔っちゃいました。
あーでもなんか気持ちいい。
久しぶりに
気持ちが楽になりました」


本当に
マサシは
気持ちよさそうで

俺まで
気分がよくなる


「あぁ。
いい酒だったな」


「はい」


「そろそろ帰るか」


「はい」


「俺がおごるよ」


「え?
ダメです、俺が誘ったんだし」


「いや、おごらせろ。
気分いいんだ」


今日は
俺が
お前に救われたから


「でも…」


「今度は
お前がおごってくれ」


「え…あ、はい!」


嬉しそうに笑うと
マサシは
一瞬
口元を手で隠した

癖なのかもしれないが

それが
照れ隠しのようで
かわいらしいと思った


店を出ると
マサシと俺は
帰り道が逆方向で
店の前で別れることになった


「じゃあな」


「はい、ご馳走さまでした」


「おぉ、気をつけて帰れよ」


「はい、おやすみなさい」


「おう」


そう言って
手を上げて
マサシに背を向けると
マサシが
俺の名前を呼んだ


「司さん…」


振り返ると

なんだか
いつもより小さく見えるマサシが
俺を見つめていた


「なんだ?」


「……」


帰りたくない


そうとでも
言いそうなマサシに
俺は一歩近づき
マサシの左腕を
軽く二回叩いた


「大丈夫だ。
そのうち誰か見つかるさ」


「……」



「マサシ」


「はい」


「たまには飲もうな」


「はい」


「じゃあな」


マサシは
まだ俺を見ているかもしれないが
俺はもう振り返らずに
マンションへ向かった


正直

ここが
slowじゃなくて
よかったと思った。


こんなとこじゃ


これ以上
何もできねぇから


マサシを
慰さめてやることは
できねーから


マサシを



抱きしめてやることも






俺が








抱きしめて
もらうことも
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