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君を好きにならない
第12章 好きにならない

シャワーを浴びて
リビングに戻ると
真琴は
ソファーにもたれかかって
居眠りを始めていた


眠いんじゃないか


書けない時
必死で起きてても
いいもん書けねーんだから
さっさと寝ればいいのに


俺は
寒そうにブランケットを
肩までかけて
眠っている真琴のそばに座り
パソコンに目を通し始めた


小説は
後輩から愛されていないと思い込む
先輩の誤解が解け
クライマックスへと向かうシーン

心情描写の上手い真琴の
筆力に触れ
思わず泣いてしまうそうになるほど
なかなかの出来だ


一人で読んでたら
絶対泣いてる
そう思いながら
読み進めると

突然
ページはストップし
それ以降
一文字も書かれていなかった


プロットも出来上がってるのに
珍しいな


真琴は
苦手なシーンや
筆が進まないシーンは
空白にしておき
その先を書いたり
大まかな流れだけでも
書き留めておくタイプなのに・・



寝息を立てる真琴に
ふと目をやると

真琴は疲れた顔で
目の下にはクマができていた



ちゃんと食ってんのか?

締め切りが近いのに
筆が進まなくて
プレッシャーなのかもしれない


大丈夫か・・真琴・・



真琴の
髪にそっと触れ
もし真琴が目を覚ましたら
大丈夫か?
と、優しく抱きしめてやりたい


書けてるとこまでは
直すとこなんて無いくらい
うまく書けてるぞ

・・と、褒めてやりながら。



でも

抱きしめることなんてできない俺は
真琴の肩から落ちてしまった
ブランケットを掛け直して
溜息をついた


お前に
バレてない方が
よかったかもしれねーな・・・


お前に触れることのすべてが
罪な気がして

俺は
何もできねーよ・・。


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