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君を好きにならない
第12章 好きにならない
小説の妄想に
入りこめないんだろう
真琴は
沈んだ声で
肩を落とした
「向井さんに言われた通り
出かけたりしたんだ、ちゃんと。
でも
なんかうまくいかなくて
全然集中できなくて・・」
「まぁそんな時もあるさ。
俺が手伝えることあるか?」
「・・ううん・・大丈夫です」
それから
真琴はまた無口になり
あまり食も進まないまま
ビールだけを
胃袋に流し込んだ
「もっと食わないと
酔っちまうぞ?」
「酔いたいからいいんです」
まいったな
真琴がスランプな原因は
色々あると思うが
その一つは
俺がゲイだと分かったからだろう
執筆が止まってるのは
もうすぐ濡れ場ってとこで
最後の濃厚な場面が待っている
あれから
『ごっこ』を頼まれていないし
濡れ場に対して
相談すら受けていない
もちろん
ごっこなんかしなくても
書けないわけじゃ無いはずだが
前作よりも
濡れ場のレベルを上げることが
真琴のミッションだ
それで真琴は
筆が止まってるんじゃねーのか
っていうのが俺の予想。
ごっこを頼まないのは
ゲイの俺に
色々されんのが
気持ち悪いと思ったのか
今まで以上のことを
無理やりされるとでも
思ったのか・・・
定かではないが
全てを知ってしまったことで
「僕は変わらないから」
と言っていた真琴が
変化しているのを
俺は感じていた