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秘めごと
第1章 芽吹

4月

腰まで伸びた髪をといて、膝たけのセーラー服に身を包んで私は家を出る。

古傷のついた鞄を持って、履き慣れた靴を履いて。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

家の中から聞こえた卵の焼ける音と、父親の新聞を開く音。
テーブルに並んでいるのは3人分のお味噌汁。そこに最初から四人めはいなかったように。

ガチャ

別段空腹を感じないまま、私はドアを開けて日の光を浴びる。





ガタンゴトン


揺れる満員電車の中で、私は窓のそとを見ていた。

ふいに感じる吐息

「ハァハァ…」

40代のサラリーマンだろうか。後ろから耳にかかる息が生暖かい。
電車の揺れに合わせて、腰に硬いナニかを擦り付けてくる。
気にせずにまた外を見ていたら、今度は太ももに違和感を感じた。

後ろから伸びた手が、スカートをずり上げて太ももを触ってくる。上に下に遠慮なく。
さすがに気持ち悪くなって睨んだら、しばらく指の動きが止まった。

また数分して、今度は下着ごしに撫でてきた。
また腰に硬いものがあたる。ガタゴトと揺れる車内で彼の息だけが荒く聞こえるみたいだ。

しばらく撫でていた手は、下着だけでは足らなくなったのか、その隙間から手を突っ込んできた。

その瞬間


「おーい、俺のお尻に触るの止めてもらえませんかねー」

「!?」

突然斜め後ろから声が聞こえてきて、私に痴漢していたのであろうおじさんの手は、背の高い青年の手に捕まれていた。

青年の言葉に車内がざわめき始める。

「バ、バカ言うな!俺はこっちの女の子を…」

「へぇ、こっちの女の子を?痴漢したんだな、はい逮捕ー」

男は一気に血の気が引いていって、その場に力なく座り込んでしまった。
周りからは冷たい視線と罵声を浴びせられながら。



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