この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘めごと
第1章 芽吹

4月
腰まで伸びた髪をといて、膝たけのセーラー服に身を包んで私は家を出る。
古傷のついた鞄を持って、履き慣れた靴を履いて。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
家の中から聞こえた卵の焼ける音と、父親の新聞を開く音。
テーブルに並んでいるのは3人分のお味噌汁。そこに最初から四人めはいなかったように。
ガチャ
別段空腹を感じないまま、私はドアを開けて日の光を浴びる。
ガタンゴトン
揺れる満員電車の中で、私は窓のそとを見ていた。
ふいに感じる吐息
「ハァハァ…」
40代のサラリーマンだろうか。後ろから耳にかかる息が生暖かい。
電車の揺れに合わせて、腰に硬いナニかを擦り付けてくる。
気にせずにまた外を見ていたら、今度は太ももに違和感を感じた。
後ろから伸びた手が、スカートをずり上げて太ももを触ってくる。上に下に遠慮なく。
さすがに気持ち悪くなって睨んだら、しばらく指の動きが止まった。
また数分して、今度は下着ごしに撫でてきた。
また腰に硬いものがあたる。ガタゴトと揺れる車内で彼の息だけが荒く聞こえるみたいだ。
しばらく撫でていた手は、下着だけでは足らなくなったのか、その隙間から手を突っ込んできた。
その瞬間
「おーい、俺のお尻に触るの止めてもらえませんかねー」
「!?」
突然斜め後ろから声が聞こえてきて、私に痴漢していたのであろうおじさんの手は、背の高い青年の手に捕まれていた。
青年の言葉に車内がざわめき始める。
「バ、バカ言うな!俺はこっちの女の子を…」
「へぇ、こっちの女の子を?痴漢したんだな、はい逮捕ー」
男は一気に血の気が引いていって、その場に力なく座り込んでしまった。
周りからは冷たい視線と罵声を浴びせられながら。

