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青い残り火
第13章 第13章
「おい、どこ行くんだよ」
鈴木の質問に答える暇はなかった。舞台の間近に陣取っていた一馬は、全校生徒が集う体育館の中で、ひとり出口へと急いだ。
着座して開演を待つ同級生を掻き分け、下級生に道を開けさせ、「もう始まるぞ」と引き止める教師には「トイレ」とだけ告げて外に出た。
そこへ行ったところで結果は目に見えていた。馬鹿な事をするだけ無駄だとわかっていた。けれどせめて、宙ぶらりんの自分の気持ちを救いたい。
ケリをつけるんだ
今しかない
彼は走った。中庭から見上げたB棟の三階に明かりはなく、正面の職員室は明るい。水呑場を抜けてA棟の昇降口に着くと、階段を降りてきた芽衣と出会した。
「一馬」
「芽衣、さっきのメール……」
「わざわざ失恋しに来たの?」
芽衣は大人びた笑顔を向けた。
「……うん」
「三島先生が相手じゃ敵わないもんね」
「うん」
真実を知らない芽衣を前に、彼はすぐに頷いた。
鈴木の質問に答える暇はなかった。舞台の間近に陣取っていた一馬は、全校生徒が集う体育館の中で、ひとり出口へと急いだ。
着座して開演を待つ同級生を掻き分け、下級生に道を開けさせ、「もう始まるぞ」と引き止める教師には「トイレ」とだけ告げて外に出た。
そこへ行ったところで結果は目に見えていた。馬鹿な事をするだけ無駄だとわかっていた。けれどせめて、宙ぶらりんの自分の気持ちを救いたい。
ケリをつけるんだ
今しかない
彼は走った。中庭から見上げたB棟の三階に明かりはなく、正面の職員室は明るい。水呑場を抜けてA棟の昇降口に着くと、階段を降りてきた芽衣と出会した。
「一馬」
「芽衣、さっきのメール……」
「わざわざ失恋しに来たの?」
芽衣は大人びた笑顔を向けた。
「……うん」
「三島先生が相手じゃ敵わないもんね」
「うん」
真実を知らない芽衣を前に、彼はすぐに頷いた。