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好きになった人
第8章 夏―2.9
詩織side

蓮に、思いつくままの暗証番号をメールで送った

携帯をしまい、直樹に近づいて行く

時間を見ると、12時30分だ


ランチに行こうよ?


心がバラバラになりそうになる

目の前にいるこの人は、私に笑いかけてくるが、裏では、私から陸を取りあげて、あろうことか、茉莉に流産したと嘘をつかせようとしている

今すぐにでも、殴りたくなる衝動を抑えて笑いかけていく

あと、少しの我慢よ。。。

好きだったのに。。。

ズルい所も、悪い所も。。。

忘れられなくて。。。


どうした?


私を覗きこむ顔は優しいのに。。。


何でもないよ?

私、イタリアンがいいなー


いいよ、何でも?


電話が鳴っている

画面を見ると、誠だ

左手で、電話に出て、右手を直樹の手を繋いで歩いていく

誠だと気づかれないように話しながら、誠の言う店に向かって行く


店が見えて、電話を切る


電話、誰から?


陸よ?


何て?


行きたい店が、なかなか見つからなかったみたい

ふふっ

ここで、いい?


店の入り口で、直樹を見る


いいよ

この店、けっこう、美味しいよ


来たことあるんだ?


入ろう?


手を繋いだまま、店内に入る


いらっしゃいませ?

お二人様ですか?


ええ。。。

先に連れが来てるんですけど?


詩織?


繋いだ手をギュッと握る

逃がさない。。。

店内を見ると、誠を見つけて近づいて行く


お待たせ?


詩織、手を離せよ?


仕方ないじゃない?

逃げられちゃうんだから。。。


誠と、話しているのを、直樹とゆりが私を睨み付けているのがわかる

直樹が私を引っ張って、繋いだ手を離して、隣のテーブルの席に座らせる


詩織、騙した?


騙してないよ。。。

ランチに来たじゃない?

一緒に食べないの?


誠を見ると、店員さんに席を移動するのを聞いている


詩織、こっち


誠が私を呼んで、ゆりを移動させている


あっちだって?


直樹を見る


二人がいいんだけど?


ダメよ。。。


何で?


だって、私は誠の奥さんで直樹はあの女の旦那さんだからよ。。。?


チッ。。。わかった

話、あるの?


さあ?


誠のいるテーブルに行くと、個室になっていた





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