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溺愛 ~ どうか 夢のままで ~
第4章 発芽
ビニールポットで育てられている花はマーガレット。
葉が増えて茎と根が丈夫になれば、そのうち花壇に植え替えられる筈だ。
その証に「マーガレット」と表記された札( フダ)だけがひとあし早く花壇の土にさしてある。
花菜は園芸委員ではないし、種を蒔いたわけでもないので無関係だが、その日を楽しみに待つ人間のひとりだった。
“ 綺麗なお花を咲かせてね ”
彼女は小さな双葉にエールを送ると、他の生徒に見られる前にと花壇の前を通りすぎた。
──
昇降口で靴を履き替える。
普段、部活に入っていない彼女の登校時刻は早くもなく遅くもなく、下駄箱の前は生徒で混みあっている。
けれど今日は違った。
いつもより早めに登校したから、ここには他学年生が数人いるだけ。
しんと静かな階段を上がっていく花菜。
荷物を持たず手ぶらの自分に違和感があるが、昨日、全てを置いて帰ったのだから仕方がない。