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熱・愛・契約~熱・愛・事変
第6章 身体が先か、恋が先か――
丁度その頃、マンションから五十メートル程離れた道の路肩に停められた黒いバンの中から、最上階の部屋の窓をじっと射るような眼差しで見詰める男が居た。
運転席でハンドルに腕を掛けて時折瞼を震わせ瞬きする以外は身動きもしない。
マンションの明かりがひとつ、またひとつと消えていくと、唐突に暗かった車内に白い明るい光が差して、男は眉をしかめ後ろを振り返った。
「高林……室内灯を消せ……これじゃあ、向こうからこっちが丸見えだろうが」
「だって今蚊が飛んでましたよ!刺されたら嫌じゃないですか!」
高林、と呼ばれた若い女は「あ!そこにいた!」と声を上げ、仕留めようと両手を男の顔の側でパチンと鳴らすが、蚊は逃げてしまったようだ。
バランスを崩した女は男が座るシートに頭をぶつけてしまい呻く。

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