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狂い咲く花
第47章 四、アリウム – 深い悲しみ
───…
「あなた…あまり蘭子を甘やかさないでくださいね。」
蘭子がふたりの間で眠りについた後に母様は父様に告げた。
食事の後に麻耶の元に戻りたがらない蘭子を今日は両親の部屋で寝せることにした。
「甘やかしてるか?」
蘭子の髪を撫でながら父様は不満げに答えるが、母様は小さく溜息を付く。
「甘やかしてるじゃないですか?夕食の時だって…あれは麻耶の言い分が正しいですよ。それなのに…あれでは麻耶がかわいそうです」
一瞬、母様の顔を見た父様はバツが悪そうに蘭子の寝顔に目を向けた。
その蘭子に向ける出来愛ぶりを、少しは麻耶に向けて欲しいと母様は願う。
「知ってますか?蘭子が寝静まった後に麻耶が独りで泣いているのを…何度話をしても「大丈夫」としか言わないんです…その姿を見てると私…麻耶が不憫で仕方ないんです」
母様の頬に一筋に涙が零れる。
美弥の願い通り麻耶をいつも見ている母様は、必死に変わろうと見えない出口を探してもがき苦しんでいる麻耶を見続け胸を痛めていた。
その思いを男の父様が分かるはずがなかった。
「もちろん…麻耶のしたことは許されることではないですよ。許して良いことでもない。けれど、誰かが味方でいてあげないと…あの子は本当にダメになってしまう。一人で抱え込むには大きすぎるんです…それを分かってるから、美弥は私たちに麻耶を託したんじゃないんですか?」
母様の言葉を聞きながら父様は起き上がり、そっと母様の頬に流れる涙を拭いた。