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雨に滲む心
第6章 約束のウイスキー
『そこまでイケメンだと苦労しないでしょ』
初めてついた指名客に言われた
『そんなわけないだろ』
そう答えたいところをぐっと堪えて
爽やかに営業スマイル
だけど俺だって
楽な道のりを歩んでいるわけじゃない
夜の世界に足を突っ込んで
苦労の一つも知らない奴がいるか
誰にだって色々あるよ
言わないだけで
晴れない気分を抱えたまま
ふらりと入ったBAR
妙に整った容姿のマスター
そういえば妙な噂が立っている店だ
きっと大半が嘘なんだろうけど
それを証明するように
女性客にあることないこと言われても
平気な顔して笑ってる
ああこの人も俺と同じだ
そう思った
『君に足りないものは絶対的な自信』
少し話しただけでマスターに指摘された
それどういうことって聞いたら
その洞察力と賢さを武器に
もっと自信をつけろって
それからマスターは
カウンターの上に一つのボトルを置いた
刻まれていたのは俺と同じ名前
『これが似合う男になれ』
その言葉は俺の支えになった
あれから何年経ったのかな
俺はマスターの言う通り
『響』の似合う男になったよ
自信がついたんだ
俺は約束を守る男だから
今夜もお客様に夢を見せるよ
自信たっぷりにね