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第12章 強敵

「じゃあ、遠慮しなくて良いんだな？」


突然唇に触れる、暖かいもの。

すぐに優しく吸い付かれる下唇。


「っ、……ん……」


ぞわっと鳥肌を立たせ、私は龍河さんの首へしがみつく。


「佐伯。椿から何処を触られた？」

「別に何処も……」


暖かい感触が離れ、龍河さんからの質問に答えると、不機嫌そうな声で怒られた。


「嘘をつくな！ あの手の早い女男が手を出さないわけないだろ」

「本当に、あまり覚えてなくて。……意識が朦朧としてたので……」

「……そうか。なら良い」


低い声にそっと目を開けると、龍河さんと目が合う。


「隅々まで触れば良い」


食らい付く様な冷血なその瞳に、一瞬背筋を凍り付かせ、私はごくっと息を飲んだ。