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冷血な獣
第17章 花嫁
「……」
ヒラヒラと落ちていく、2枚に別れた紙切れ。
それは床で動作を止めると、無言になった私達に会話させる。
「ご、ごめんね……りょう君」
「妃南、そんなに俺が嫌かよ?」
「嫌というわけじゃなくて……ただ異性としては見れないっていうか……」
分かって欲しい。
絶対に手に入れられないものはある。
いくら裕福でも恵まれたルックスでも、人の心は手に入らない。
……今度こそ、分かってくれたよね……。
「分かった……でも妃南、結納は予定通りにしてくれるか?」
「うん、大丈夫……」
落ちた婚姻届を拾うりょう君の姿を、胸を痛めながら見つめる。
一つの恋が終わった――
スカートのポケットに入っている携帯のバイブ音に気付くまでは、私は一言も話せなかった。