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冷血な獣
第6章 振り向かせたい
「正直、まだ龍河さんが好きです……」
「告白しなくて良いの?」
「……告白?」
珈琲に口をつけながら茶織先輩が質問すると、私は不思議に思う。
告白なんて考えてもみなかった。
初めから諦めて、自分に自信もなかったから。
「今度は妃南が、龍河さんを振り向かせてみたら?」
真剣な茶織先輩の言葉に、心を打たれた。
「私龍河さんの事、振り向かせたいです……」
「そうでしょ? 別れてから、二人とも元気ないんだもの」
私の言葉を聞くと、珈琲カップをテーブルへ置いて、話を続ける。
「龍河さんもなのよ。元気がないの。分かるでしょ? この意味」
「分かりません……」
「もお~。妃南、鈍感!」
呆れた様に話すと、茶織先輩は優しく微笑んだ。
「龍河さんって、絶対まだ妃南の事好きよ!」
「そんなまさか……」
「諦める前に確かめてみる価値はあるんじゃない?」
その笑顔を見ると、心無し私の気持ちは前向きになれた様な気がして。
茶織先輩に頷いてみせながら、私は自分の中にある諦めないという固い意思に気付いていた。