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初恋
第3章 記憶のかけら
ちっくしょう。腹立つな。
「あの人はとても優しいの。でも……傷付きやすい性格で。そういう日はわたしが一生懸命、慰めてた」
「あー、それはわかったけど。じゃあ君はそいつと一緒に住んでたんだな?」
「うん!でね、あの人はね……」
「…っ…そいつの話はいいから。それより家の住所を思い出せって」
「あっ…、ごめん…」
見た目からして俺と同年代くらいなのに、彼氏と同棲ってどういうことだよ。
さすがに結婚はしてないだろうけど、さ。
のろけ話なんて聞いてられるか。
俺は彼女の話を遮った。
怒られたと思ったのか、しゅんと小さくなったその姿に……ますます、苛立つ。
その苛立ちをこらえて再度、家の場所を問いただした。
だが取り戻した記憶はほんの少しみたいで、彼女は目を泳がせて困っていた。