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王子様は、きらきら星の住人
第1章 壊れたきらきら星

「とーた君……」

 彼の背中に向かい、呼び掛ける。
 いつもの優しい涼やかな笑顔で振りかえって、こう言ってくれる事を期待してーー

『大丈夫だよ、僕がいるから』

 指を叩きつけるようにピアノを弾く彼は、真由の呼び掛けに反応しない。
 もう一歩近づき、呼んでみる。

「とーた君」

 何も聴こえていないかのように、彼は演奏に没頭している。
 真由は、絶望感で立ち尽くす。 
 そこに見えない壁がそびえているのだろうかーーと疑いたくなった。

「とーた君……とーたくんっ……!」

 身体中で叫んだその時、空間を切り裂くような高笑いが響いた。
 涙でぼやけた真由の視界に、髪を振り乱し、大きな口を開けたまま動かない母と、憔悴しきった表情で母を抱き締める父と、そんなふたりを指差し、身体を折って笑う透太の母がよぎった。
 キラキラ星のクライマックスのフレーズを奏でる透太の髪が揺れ、ライトに照らされ金色に輝いた刹那、真由の意識は途切れた。

 あれから11年。
 真由は16歳になった。
 あの日の出来事を1日たりとも忘れた事はない。
 いったいあれは何だったのか。
 夢だったのだろうか。
 いっそのこと、奇妙な白昼夢であって欲しいのに。
 だが、指先に、そして耳の奥に刻まれたキラキラ星のメロディーが、これは現実なのだ、と真由に教えていたーー
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