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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第35章 兄を見過ごすワケにはいかない

「そんなもんオフクロに聞け。それよか散々オヤジの残した金まだあるだろ。それで十分じゃないか」
「そうはいかねえ。あの財産は全部ギャンブルや女に使ってもう無ぇんだよ。だからお前が責任をとって売った金額さっさとよこせ」
兄は父親からかなりの額の財産をうけとったはずだ。生命保険や企業年金、その他会社から受け取った父親の為の補償金らしきものを全て使い果たしたという。
どうやったらそんな短期間で莫大な金を散財したのだ。
オレはまだ世の中の事をよく知らない15のガキだ。なのにギャンブルや女遊びだけでそんなにも使い果たしてしまうのだろうか。
兄は態度を急に変え、オレに訴えかけるように懇願した。
「…いや悪かった。ついムキになってしまった。あの時は悪かった」
先程までの傲慢な態度からうって変わったかのようなしおらしい表情になり、オレに頭を下げてきた。
「あの時は目の前の金の事ばかり考えていた。だけどしばらく経つと、オヤジの事が後からジワジワと頭の中で浮かんできてな…オレはオヤジとはよくケンカして、あんなくそオヤジさっさと死ねばいい、なんて思って、高校を卒業して大学に入学したと同時にあの家を出たんだ。オレはオヤジから一切の援助を受けずにひとり暮らしをした。だけどな、まさかホントにオヤジが死ぬなんて…」

