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快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体
第40章 説得
「…この部屋って、盗聴器とか隠しカメラ設置されてないよな?」

「…そんな事は聞いたことないわ、それより今の話ホントなの?」

ウソであって欲しい、鴨志田は微かな希望で達也に問いただしたが、無惨にもその思いはかき消された。

「全部ホントの事だ。アンタのブランド品を売り払ったのは亮輔だが、それを吹き込んだのはあのオフクロだ。アンタは何もかもあの女によって全てを失ったんだ。だからこの話はアンタがいないと成り立たないんだ、頼む、力を貸してくれ」

達也は頭を下げた。鴨志田に話した半分は彼の作り話だ。
しかし、鴨志田には十分効果的な話だ。

「…で、アタシは…何をすればいいの?」

鴨志田は達也が救世主になってくれるのなら、という思いで達也の話を聞いた。

「まず始めにアンタを晴れて自由の身にする。だからいくら借金が残ってるのか確認するんだ」

「いくらって、アナタそんなお金どこから出せるのよ?」

「あのオヤジが住んでたマンションをオフクロが売って、最初は亮輔に渡そうとした。だが、オレはその間に亮輔の前では良き兄を演じて、オフクロも今じゃオレの事をすっかり信用しきってる。で、オレは今、オフクロの援助を受けながら大学に通ってる。勿論、あのマンションを売った金もオレが貰うようになった。だからまずはアンタがこの世界から足を洗わなければ計画はパーだ。次に来るまでに借金の額を把握して欲しい」

達也は鴨志田を説得した。

人を騙したり、陥れたりするのは生まれもっての才能なのか、それとも今まで培ってきた経験なのか。

鴨志田は達也をすっかり信用しきった。
まずは鴨志田を懐柔する事に成功した。
後は彼女の借金を肩代わりし、自由にさせてから、入念に打ち合わせをしよう、達也は目的の為なら手段は選ばない。

「さて、そろそろ時間だな。次は多分2日後にはこれそうだ。それまでにいくら借金あるのか聞き出して欲しい」

そう告げて、達也は部屋を出た。

(よし、とりあえず第一作戦は成功しつつある)

達也は内に秘めた思いを隠し、店を後にした。
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