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国王の契約花嫁~最初で最後の恋~
第12章 この美しい月影を、あなたと
「そなたと共に見たこの月を何故か忘れられそうにない」
そのときだった。頬に冷たいものが触れ、ファソンは我に返った。見上げれば、白い花びらが天からゆっくりと舞い降りてきている。
煌々と輝いていた月を鈍色の雲が閉ざそうしている。それでも、ファソンは確かに見た。
この世のものならぬ美しさで輝く満月と、闇色に覆われた天から降ってくる雪の花びらを。月が出ているのに雪が降る光景というのは、なかなか見られるものではない。