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第12章 この美しい月影を、あなたと

　彼はそっと酒場を抜けだし、あの四辻まで戻ってきた。けれど、当然ながら、舞台はとうに跡形もなく片付けられている。


　既にあれほどいた観客は蜘蛛の子を散らしたようにいなくなり、人どころか犬の子一匹さえ見かけなかった。



　それでも、ソンジュの視線は忙しなくさまよっていた。ただ一人の女を探し求めて。




　やがて、その視線が大きく揺れ、彼の黒い瞳が潤んだ。涙の幕でぼやけた視界に、燦めく満月が朧に滲む。