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第14章 烈しさと切なさと、愛しさと

　情事の最中には男も女も心にもない甘い科白を容易く口に乗せる。それは知識としては知っていたけれど、カンだけは別だと信じていた。彼だけは世の並の男とは違う、と。


　何と無知で愚かな小娘だったのだろう。この世に冷めない愛など、ありはしないのだ。


　カンに最後通牒ともいえる言葉を突きつけたその日、ひと月近く咲き続けて眼を愉しませてくれた〝ファソン〟の桜が散った―。