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第19章 嵐の予感

　カンは元々あまり酒はたしまない人だ。ゆえに酒肴に手を付けないことが多い。果物の乗った卓にはお茶の準備も整っている。いつものようにファソンが茶器に手を伸ばすと、カンが言った。



「今夜は良い」




　おもむろに手を伸ばし、果物の盛られた器から石榴の実を取った。食べやすいように予め二つに切り込みの入った実を割り、半分をファソンに差し出す。カンはそのまま紅瑪瑙のような艶やかな実が並ぶ実をひと口囓った。