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国王の契約花嫁~最初で最後の恋~
第36章 真実

欅の樹の隣には桜が植わっていて、今や満開である。薄紅色の花がたわわについて、風が吹く度にひとひとら、ひとひら、ひらひらと宙を漂い流れてゆく。その花びらを眼で追いながら、春香は改めて穏やかな幸せに感謝していた。
思えば夢龍が予期せぬ濡れ衣で突如として義禁府に囚われの身となったあの日はまだ春浅く、屋敷の門前には紅椿が咲いていた。夢龍が出仕した直後、椿が落ちるのをたまたま見かけ、春香は言いしれぬ不安に囚われたものだ。そして、その不安は不幸にも的中してしまった。
思えば夢龍が予期せぬ濡れ衣で突如として義禁府に囚われの身となったあの日はまだ春浅く、屋敷の門前には紅椿が咲いていた。夢龍が出仕した直後、椿が落ちるのをたまたま見かけ、春香は言いしれぬ不安に囚われたものだ。そして、その不安は不幸にも的中してしまった。

