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第9章 水仙の妖精

　よく響く声が次いで耳に飛び込んできた。どうやら、〝春香伝〟の仮面劇をやっているようだ。両班に扮した若い男が向かい立つ娘に言っている。



「いいえ、若さま（トルニム）。私の母は妓生ではありますが、私は妓生ではございません。若さまのお相手をすることは叶わないのです」





　応えているのが春香役だろう。身の丈のある女だ。夢龍役の青年とほぼ身長差がないほどだ。