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第9章 水仙の妖精

　元々、ファソンの良人カンもこの古書店の常連客であり、二人が出逢ったのもこの書店であった。そういえば、と、ファソンは懐かしく思い出す。カンと自分を引き合わせてくれたのも〝春香伝〟であった。〝忠孝明道〟という清国渡りの稀少な本を探しにきたファソンと、〝春香伝〟の続きを執筆中であったカン。まさに、ひとめ惚れの恋に落ちた二人だった。




「あれでも、色々と忙しいのよ」
　ファソンは声を低めてガンドクに含み笑いで告げた。