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第9章 水仙の妖精

「親方が実の父親であったらと何度願ったかしれやしない。ファソン、俺は捨て子だったんだよ」


　ファソンは返す言葉もなかった。






「俺たちは朝鮮中をあちこち旅して廻る旅芝居の一座でね。南の方に行った小さな町で興行を始めた二日めの朝、一座が張った天幕、正しくいえば親方の天幕の外に俺が棄てられていたそうだ。明らかに旅芝居の一座に拾われることを想定して棄てたんだろう」