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国王の契約花嫁~最初で最後の恋~
第10章 秘め事
「何をしておる、さっさと開けよ」


 苛立ったカンの声と女官たちの戸惑う気配が扉越しに伝わってくる。普通なら、ここで尚宮が


―国王殿下のおなりにございます。


 と、告げるのが通例なのだ。扉前に控えた尚宮はこの際、先触れも到着の知らせもなしと判断したらしかった。王妃殿の筆頭尚宮はベテランの年配であるが、何事も先例第一のあまり融通のきかぬ質なのが玉に瑕である。
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