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第10章 秘め事

　けれど、ソンジュはどこまでも紳士であり優しかった。この世の中には身分を笠に着て威張っている癖に、人格者を気取る両班がたくさんいる。内実、そういう者に限って、人妻や恋人のいる娘を平然と手籠めにしたり、慰みものにしたりするのだ。




　そうやって泣く女は恐らくファソンが知るよりもっと多いだろう。




　しかし、ソンジュは日々を懸命に生きる庶民でありながら、身分だけが高く中身のない両班よりもよほど人間として高潔であった。