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第10章 秘め事

　不意に一陣の風が身の側を駆け抜け、水仙の群れ咲く野原を風が渡ってゆく。純白の可憐な花たちが一斉にさわさわとかそけき音を立てて揺れる。



　出逢えるはずのない女と出会い、生涯で至福の瞬間を過ごした。一生分の幸せな夢を見た。だが、極上の夢から覚めた後、身に吹く風はこんなにも冷たく身に滲みるものなのか。




　ソンジュは次第に闇の色に覆われる野原で一人、寒風にさらされていた。